ANK免疫療法について

免疫療法

情報提供 河合 浩様

ANK免疫療法…ちょっと聞き慣れない言葉かも知れませんが、NK細胞、或いはナチュラルキラー細胞ならご存知の方もいらっしゃると思います。

ANK免疫療法のNKはNK細胞細胞を指し、AはAmplifiedのA。
増強されたNK細胞を意味します。

ANK免疫療法」は高度に活性化させたNK細胞で、がん細胞を攻撃し退治、転移や再発の防止して最終的にはがんの完治を目指す、がん治療法の一つです。

がん治療で期待される免疫療法


現状では、がんの治療方法は、手術、抗がん剤、放射線の三大療法が中心となっています。

早期発見のがんにはとても良いのですが、がんが転移を始め、進行がんになると対応も難しくなり手術が困難になる場合も有ります。

そうなると治療方針は延命目的が主となり、がんを克服するのは難しいとされてしまう事もあるでしょう。

そんな中で注目されているのが「免疫療法」です。
人間の持つ免疫力を強化してがん細胞の退治を計ります。
免疫療法には様々なものが有りますが「ANK免疫療法」もその免疫療法の一つです。

ANK免疫療法は、患者から取り出したリンパ球内の野生のNK細胞(ナチュラルキラー細胞)を培養し、それを点滴して患者の体内に戻し活性化したNK細胞でがん細胞を攻撃させます。

また治療の対象は、いわゆる「がん」と呼ばれる乳がん、肺がん、胃がんや悪性リンパ腫等全てのがんです。
また血液のがんと言われる白血病の治療実績も有ります。

NK細胞が、がんを攻撃する

ANK免疫療法の主役になるのがNK細胞です。
NK細胞はリンパ球の一種で、人間が備える自然免疫を担う重要な免疫細胞で、がんやウイルス感染から人体を守る重要な役割を持ちます。

実は健康な人でも、体内では1日数千のがん細胞が発生していますが、それをNK細胞が退治している為にがんにならずに済んでいるのです。

NK細胞と同様に、がん細胞を攻撃する免疫細胞にはT細胞の一種、キラーT細胞(CTL)が先にあり、その研究過程でNK細胞は発見されました。

CTLが、がん細胞を攻撃する為には学習が必要になるのに対し、NK細胞はそのような前提条件は一切不要で、がん細胞を攻撃します。

がんの部位も種類も問いません。

しかも、NK細胞には非常に精緻な認識システムが備わっている為に、正常な細胞は叩かないで、がん細胞だけを攻撃するのも特徴です。

NK細胞は全身をくまなく巡回しながら、遭遇した全てのがん細胞を即座に攻撃しますから、進行がんで全身に散らばったがん細胞も退治して、転移や再発を防ぐ事が期待されます。

ANK免疫療法の実際 リンパ球採取から点滴まで

ANK免疫療法はまず患者の体内よりリンパ球を取り出す事から始まります。

人口透析器のような機械でおよそ3時間くらい掛けて、血液を循環させながらリンパ球のみを採取します。(場合によっては血液を採取で済ませる事もあります)

そこで採取されたリンパ球は即日京都に在る培養センターに運ばれると、そこで2~4週間かけて100億個を目標にNK細胞のみを培養します。
これは一般的な免疫療法とは桁違いに多い数です。
そしてそのNK細胞を選別はしません。
個体差のある野生状態のままのNK細胞の数を増やし活性を高める事で、全てのがん細胞を攻撃するANK免疫療法が実現するのです。

そうして培養されたNK細胞は一旦冷凍保存された後、必要な分を解凍して点滴します。

点滴は週2回で6週間、計12回の1クールが基本になります。

がん患者の身体は免疫が抑えられているので、活性化したNK細胞を点滴してもしばらくするとまた活性のレベルは下がってしまいます。

ですから下がりきる前に再度点滴して、がん細胞を攻撃し続けられるNK細胞のレベルを保つ為に週2回のインターバルで点滴する訳です。

点滴されたNK細胞は早速がん細胞の攻撃を始めます。

その点滴されたNK細胞は、体内に残って弱体化していたNK細胞をも刺激して活性化します。
それらが加わってがん細胞に総攻撃を仕掛けるので強い治療効果が期待できるのです。

点滴後の発熱、免疫副反応


しかし、強い治療効果は発熱を起こすことになります。

これは、他の一般的な免疫療法との違いでしょう。
一般的な免疫療法(NK細胞を用いた他の療法も含む)では発熱などの免疫副反応は無いか、或いは有っても微小な程度に止まります。

しかしANK免疫療法の場合は発熱は必ずと言っていい程、伴います。

それだけ激しくがん細胞を攻撃しているとも言えのです。

特に最初の1~2回目の点滴後にこのような免疫副反応が強く起こり、後は徐々に軽くなる傾向ですが、程度は個人差も大きいでしょう。

いずれにせよ、抗がん剤や放射線治療の副作用とは異なり、一過性のものですので数時間から1日程度で収まります。

ANK免疫療法と標準治療を並行する


ANK免疫療法は元々、それ単独でもがんの治療が出来る事を目標に開発されています。

しかしANK免疫療法は健康保険が適用されない自由診療ですので治療費も高額になり、ANK免疫療法だけで何クールも繰り返しての治療では費用は莫大なものになります。
またANK免疫療法を行っている医療機関も現状では限られています。

ですからANK免疫療法は標準治療と併せてを行う事が前提となっています。
また標準治療とANK免疫療法は別の医療機関で行う事になります。

そして標準治療の日程を把握した上で、ANK免疫療法を行いがん治療を効果的に進められるようにします。

例えば、手術で、がん細胞の大部分を除去した後に全身に散らばったがん細胞をANK免疫療法で退治する。

抗がん剤の休薬期間を利用してANK免疫療法に入る、などのように調整します。
抗がん剤治療は免疫細胞にもダメージを与えるので、ANK免疫療法を同時には行わずに、時期をずらす訳です。

また、手術が出来ないような場合では、ANK免疫療法の治療で手術が出来る状態にまで挽回する事もあり得ます。

このように患者の状態や標準治療のプランに合わせて、ANK免疫療法のスケジュールを立て治療を進めます。

分子標的薬とのコンビネーション


欧米では抗がん剤にかわり、分子標的薬が主流になってきました。
日本でも健康保険が適用出来るものが出ています。
この分子標的薬は、ANK免疫療法と大変相性が良いのです。

分子標的薬は、がん細胞の増殖を抑える事を主眼とした薬ですから、がん細胞を直接傷害はしません。

しかし分子標的薬が、がん細胞を抑えて込んでいる間にNK細胞が攻撃する、と言う役割分担が成立してANK免疫療法とは高い相乗効果が見込めます。

更に分子標的薬の一種の抗体医薬品にはADCC活性を持つ物があり、これがNK細胞の攻撃力を2倍近くまで跳ね上げたと云う実験結果も有り、より一層強い治療効果が期待されています。

このように、本来的には分子標的薬とANK免疫療法は良い組み合わせなのですが、日本の保険診療に於いて制限が有る為に、ANK免疫療法と併用する場合は保険適用外で使用する事になります。

ANK免疫療法に掛かる費用は約400万円


前述の通り、ANK免疫療法は自由診療の為治療費は大変高額になります。

リンパ球採取から1クールの点滴まで、約400万円強が必要です。

そしてこの1クールの12回だけの点滴で進行するがんを食い止められるか否かは微妙な場合もあります。

NK細胞が、がんを攻撃するのは間違いないのですが、がんの勢いが強いと押し返されてしまう事も有り得ます。
かといって、数クールの治療を継続するとしたら費用は莫大なものになるでしょう。

またそもそもリンパ球採取からNK細胞培養が終わるまでの間は治療は出来ない訳で、その間の、がんの進行も懸念されます。

ですから一気にがん細胞を減らせる手術や増殖を食い止められる科学療法と、がん細胞を1つ1つ攻撃するANK免疫療法を併用するのは合理的と言えるのです。

そして最終的には患者の免疫力を、がんの転移や再発の心配がないレベルに回復させて、がんの完治を目指します。

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